慣性爆撃理論
今回は筆者の長年にわたる空母運用において、最も重要でありそして筆者の異常なまでの勝率の根幹を成す理論について、記述を行います。
そもそもこの理論はミッドウェイ使用を前提としています。ミッドウェイを使用する予定のない方は読む必要すらありません。
急降下の形態を取るHE爆撃であれば応用は出来ますが、機体性能や散布界などが異なるため究極的にはミッドウェイ爆撃専門の理論です。
1,慣性爆撃理論とは
慣性爆撃理論とは、ミッドウェイが急降下爆撃を敢行する際の旋回性能と、標的艦の転舵性能および行動・姿勢の推移についての計算を行い、レティクル内への収容率および爆撃1回あたりの命中期待値を高めるための理論です。
基本的に散布界への着弾確率は外楕円:75%、内楕円25%で固定されており、この点についてはこの理論において操作することはできません。
極端に言えば爆撃散布界の100%が敵艦艇の船体に被っていれば、爆弾命中率は100%となります。(下記画像のように)
対戦艦であれば、標的艦の船体幅が爆撃機のレティクルの横幅よりも大きいために基本的に縦の軸線がある程度ずれていても、奥行き偏差と横偏差の修正でこの命中率100%を達成することが可能です。
一方で対駆逐艦の場合にはレティクルの大きさよりも標的艦の船体が小さいために、まずはその船体をすべてレティクル内に収めることが目標となります。
しかし敵艦も回避を行うために、実際の戦闘で100%船体がレティクル内に収まるケースは多くありません。
そこで、少しでもこの収容率を高めるために爆撃を行うにあたって工夫が必要となります。
2.爆撃散布の基本と癖について
まず、大前提として爆撃機における爆弾の着弾は「投下時点での表示レティクル内のいずれかの地点」に着弾します。
レティクルは投下のタイミング(がサーバー上で処理された瞬間)で固定されます。ゲーム中表示としてもこれは不動となります。
※第3主砲下の爆発に見えるエフェクトは火災発生初期のもの
上記の例では、投下時敵の艦首~船体後部にかかっていたレティクルが、着弾時には艦後方へと移動していますが、これは敵船体が前進しているため相対的に移動しているものとなります。
また例で分かるように、着弾に規則性はなく(しいて言うのであれば先述した内:外への配分)前後左右に偏る場合もあれば満遍なく散らばるときもあります。
3.投下高度による散布界への影響
まずは下記の画像をご覧ください。
(詳しく見たい方は拡大してください)
前3枚はレティクルが最大収縮する内、最も高高度で投下した画像
後3枚はレティクルが最大収縮する内、最も低高度で投下した画像
※筆者操作での投下のため、実際には0.2s程度ずれていると思います。
検証回数が十分とは言えないかもしれませんが、見た限りでは高高度投下の方が、爆弾の落角が浅いように見えます。
この角度が異なる原因については、上記画像のメカニズムで説明可能です。爆撃機のレティクル最大収縮範囲は、投下高度に寄らず一定です。上記画像の右と左の黒色で示した三角形は同じものですが、右のように低高度で投下した際に高高度のものと同様の落角の場合、実際の着弾範囲は表示よりも小さな範囲に限定されることとなります。
しかしゲーム内の表示通り、実際の着弾範囲については同一となります。
このことから低高度で投下するほど、爆弾の落角は大きくなることが説明できます。
このメカニズムを考慮することで(この理論が正しければ)、低高度での投下におけるメリットが一つ説明できます。上記画像のように、低高度で落角が十分につく場合、水面上に出ている船体一部や艦橋にヒットする確率がわずかに上昇する、ということです。
画像はかなり極端にしていますが、実際のゲーム中においても同様のことが発生している可能性は高いです。特にレティクル最大収縮範囲よりも船体長がわずかに小さい相手に対しては効果が大きいと思われます。
上二枚:高高度での投下(投下→着弾) 下二枚:低高度での投下(投下→着弾)
ちなみに横方向のずれについては、縦方向に比べ範囲がかなり小さいため、明確な差は見られませんでした。
まとめると、小隊の最大機数での投下が見込める場合(往復しない前提)、または往復が可能な状況でかつ飛行中隊のヘルスに十分に余裕がある場合、可能な限り高度を低くして投下したほうが命中期待値は上昇する、となります。
4.エンジンブーストによる投下高度への影響
まずは下記の3枚の画像をご覧ください。上から
・エンジンブレーキ(Sキー押しっぱなし)
・なにもなし(巡航速度)
・エンジンブースト(Wキー押しっぱなし)
でそれぞれ爆弾投下制限時間ギリギリのタイミングでの主観です。
見比べると、機種の上がり方が明らかに違いますね。投下体制に入った直後に高度が上昇しますが、その際の到達点(高度)は一定で、その後の速度が異なるため、速度が高いほど低高度付近で投げるというのは当然です。
つまり、3節で説明したように低高度に限りなく近づけるのであれば、爆弾投下時にはエンジンブーストを使用したほうが良い、ということになります。
ただ、わずかとはいえ投下時の速度が低いほど散布界が縮小する、というメカニズムも存在します。
残念ながら執筆時点で
・降下時はエンジンブーストを使用し、投下直前はエンジンブレーキを使用する
・降下時から投下時まで一貫してエンジンブーストを使用する
のどちらが期待値が高いかの検証は行えていません。
また副次的な効果となりますが、着弾までの秒数が減少するため偏差も少なく済みます。(最高到達点での秒数は約2.10秒→エンブ常時使用で最短0.75秒)
また、急降下時は画像のように約50°で降下しますが、高度が下がり敵艦と近づいた場合には、機種が上がり水面に対する確度が平行に近づくため、相対速度が上昇します。敵艦に対してアプローチが遅れた場合にもためらわずエンジンブーストを使用しましょう。レティクルが間に合わず無駄投げになる、というのはミッドウェイでは避けたいところです。
5.回避する目標に対してのアプローチ位置について
上記の理論を頭に入れたうえで、実戦におけるアプローチ位置について考察していきます。下記画像は実戦における航路の概略図です。(赤線:爆撃機、黒線:艦艇)また、青色は攻撃体制に移行後、爆撃投下を行える領域とします。
爆撃機の操作性の関係上、内周側への旋回は得意ですが、外周側への切り替えはかなり無理があります。そのため投下体制へのアプローチ円は艦艇の外側から接するように描くのが基本となります。
以上を基にした旋回円の半径は下記1枚目のように示せます。
3.4章での説明の通り、可能な限り低高度での投下を目標とする場合、青色四角形のうち、最も上側で投げるのが理想となります。
しかし、敵艦艇が転舵を続けるとは限りません。舵を戻された場合、爆撃可能な領域の手前で円弧が直線に、場合によっては逆向きの円弧を描き始めます。
上記のアプローチでは領域の中盤が爆撃のポイントになりますが、回避を考慮した場合これは最適な形とは言えません。
そこで、下記画像のようにあらかじめ奥でちょうど軸が一致するよう1枚目の画像よりも外側からのアプローチを行います。(黒色:敵艦艇の転舵航路、赤点線三角:1枚目で示した際の艦載機の位置
より外側からアプローチを行うことで、先ほど示した爆撃可能なタイミング前での転舵切り替えについても対応が可能となります。
下記画像の場合、赤線がほぼ垂直に領域にアプローチしているため、左右どちらの転舵に対しても対応できます。
下記は実戦の中での爆撃の例です。
1枚目:転舵する敵に対して外寄りのアプローチ、投下の瞬間の軸線に注目
2枚目:途中で舵を変えられた場合の例、レティクルがリプレイバグで広がっていますが実際は最大収縮です。
6,投下時の爆弾に働く慣性力について
まず下記の画像をご覧ください。
上記は左側へマウス操作のみによる最大旋回を行いながら爆撃を行った際のスクリーンショットですが、艦載機の影を見ると中心以外の機体の中心はレティクルの外側にあります。
レティクル内に100%爆弾が着弾するため、左右の機体から投下された爆弾は、必ず左右横方向に対して落角を保有します。(内側に対して慣性が働く)
参考GIF 画質が粗いですが、右側の爆弾が内向きに角度を持っているのがわかると思います。(おそらく左側も同様)
画像は敵艦が画像右方向へ転舵している際の断面を、艦首方向から見たとした場合の図です。
敵船体は転舵方向と逆へ傾くため、図のようになるはずです。
船体側面は実際には緩やかな傾斜を有しています。そのため図のような角度に船体が傾いた場合には、左の機体から投下されるものについてヒット判定がわずかに増大します。
・本来側面の傾斜に沿って落角を持つ爆弾は水面へ着弾するが、船体が傾くことで(左側の機体から見た)見かけの船体表面積が増大します。
・右側の機体からの投下分については、当たり判定が少し小さくなるが、側面の傾きから水面付近での判定の減少幅は左側での判定増加分に比べ小さくなる。
この両サイドの判定の差より、標的が転舵している最中の方が、わずかではありますが当たり判定が大きくなります。(標的艦の横幅がレティクル幅より小さい場合)
7,本論のまとめ
以上がミッドウェイの爆撃に関する細かな説明となります。
まとめると
・可能な限り低高度での投下を目指す
・エンジンブーストが使用可能な場合には、投下体制~投下1秒前くらいまでは使う
・敵が転舵による回避を行っている場合は、その転舵半径が描く円の外側からアプローチする。(当然ですが、外過ぎてもダメです)
・なるべく敵が舵を切り切っているタイミングでの投下を行う
加えて基礎的なことではありますが、
・攻撃体制後はなるべくA・Dキーでの旋回操作は行わない(散布界収縮の妨げとなるため)
・一回あたりの攻撃で爆撃機3機が爆弾を投下するように、機数を管理する
※特に赤字の項目は、ミッドウェイに不慣れな方も意識することができると思います。
実戦では敵の回避との読み合い、対空爆発の回避などまだまだ他の要素もありなかなか思い通りの爆撃を行うことは難しいですが、これからミッドウェイを志す方、ミッドウェイを使用している方の参考になればうれしい限りです。
最後に、トレーニングモードでの検証に協力いただいた mizu423 さんに謝意を述べ、この記事を締めます。